情報更新日:2022年4月
我が家の“まさか”に役立つ「地震保険」。正しく知って賢く備えよう!
発生予測が難しく一度起こると大きな被害となりかねない地震。地震保険は自宅建物と家財が被った損害を補償する保険です。我が家の”まさか”に備える地震保険のポイントをご紹介します。
知っておきたい!地震保険のポイント10
地震保険とは?
地震保険は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因として、自宅建物と家財が被った損害(火災・損壊・埋没・流失)を補償する保険です。地震災害による被災者の生活の安定に寄与することが目的です。
地震による火災は、火災保険では補償されない!?
「地震で発生した火災によって自宅が焼失したら、火災保険で補償されるから大丈夫」と思っていませんか。地震に伴う火災や津波による建物等の損害は、火災保険では補償されません。地震災害は予測が困難な上に一度発生すると被害が甚大になるという特性のため、民間の保険会社だけでは補償責任を負えない可能性があるからです。地震保険は「地震保険に関する法律」に基づき、政府と民間の損害保険会社が共同で運営しているのが特徴です。地震による災害の備えのために、地震保険の加入を検討しましょう。
地震保険は単独で契約できない!?
地震保険は、火災保険とセットで加入しなければなりません。地震保険は、火災保険で補償されない地震による火災の損害補償等を補完する目的で作られています。なお、火災保険の契約期間の途中に、地震保険に加入することは可能です。
地震保険の保険金額は、火災保険の最大50%まで
地震保険の保険金額は火災保険の契約金額が基準です。保険金額は、火災保険の契約金額の30%~50%の範囲内で設定します。さらに、保険金額には上限があって、建物は5,000万円、家財は1,000万円まで。例えば、建物の火災保険の保険金額が2,000万円だとすると、地震保険の保険金額は最大で1,000万円です。
地震保険の保険金額の支払われ方
地震保険では、保険対象の建物または家財が全損、大半損、小半損、または一部損となったときに保険金が支払われる仕組みです。これらの区分は、地震発生後に迅速に保険金を支払うためにあります。建物の損害は主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額や焼失・流失した部分の床面積の割合により判定し、家財も損害額で判定します。なお、損害の程度が一部損に至らない場合は、保険金は支払われません。(下表参照)
保険料は建物の構造と所在地で決まる!
2017年1月から3段階で行われてきた地震保険・基準料率改定の3回目が、2021年1月に実施されました。1回目からの改定幅は全国で計17%増です。一連の改定は、2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震を踏まえた震源モデルの見直しや住宅・土地統計調査等の基礎データの更新を受けて行われました。
地震保険の保険料は、保険金額に「保険料率(=基準料率)」を乗じて計算します。「保険料率」とは、保険金額1,000円に対し、保険契約者が1年間に負担する1年間の保険料の割合を示すものです。地震保険の保険料率は、損害保険料率算出機構が算出していて、地震保険の「基準料率」として位置付けられています。
地震保険の保険料の元となる基準料率(=保険料率)は、「建物の構造」と「建物の所在地」別に定められた基本料率に、割引率(※1)と長期係数(※2)を乗じて計算します。ゆえに、自信保険の保険料は、建物の構造と所在地によって決まるのです。危険度が高いとされる建物と地域ほど保険料が高くなり、危険度が低いものには割引きが適用される仕組みです。
■地震保険の保険料/保険金額100万円、保険期間1年の場合(割引適用なし)
項目 | 建物の所在地 | 建物の構造 | |
イ構造(耐火構造) | ロ構造(非耐火構造) | ||
1等地 | 北海道・青森県・岩手県・秋田県・ 山形県・栃木県・ 群馬県・新潟県・ 富山県・石川県・ 福井県・長野県・ 岐阜県・滋賀県・ 京都府・兵庫県・ 奈良県・鳥取県・ 島根県・岡山県・ 広島県・山口県・ 福岡県・佐賀県・ 長崎県・熊本県・ 鹿児島県 | 740円 | 1,230円 |
2等地 | 福島県 | 970円 | 1,950円 |
宮城県・山梨県・愛知県・三重県・ 大阪府・和歌山県・ 香川県・愛媛県・ 大分県・宮崎県・ 沖縄県 | 1,180円 | 2,120円 | |
3等地 | 茨城県 | 1,770円 | 3,660円 |
埼玉県 | 2,040円 | 3,660円 | |
徳島県・高知県 | 1,770円 | 4,180円 | |
千葉県・東京都・神奈川県・静岡県 | 2,750円 | 4,220円 |
建物の構造は「2区分」
■構造区分
構造区分 | 基準 |
---|---|
イ構造 | 耐火建築物、準耐火建築物および省令準耐火建物等 ※主として鉄骨・コンクリート造の建物 |
ロ構造 | イ構造以外の建物 ※主として木造の建物 |
建物の所在地による等地区分は「3区分」
地域別の地震による危険度を考慮した区分です。1等地は、新潟県、兵庫県、鳥取県、熊本県など。2等地は、宮城県や福島県、愛知県、大阪府など。3等地は東京都、神奈川県、静岡県、茨城県などとなっています。(【表A】参照)。基本料率に差があり、保険料に影響します。
建物の耐震性能等によって4種類の割引率が適用!
- ・免震建築物割引(割引率50%)
- ・耐震等級割引(同10%・30%・50%)
- ・耐震診断割引(同10%)
- ・建築年割引(同10%)
※保険料と保険金のシミュレーションは、下記のサイトを参照。
契約期間が長いほど保険料はお得!?
地地震保険の保険期間は、1年および長期(2年~5年)です。保険期間が2年~5年(長期保険保険料払込特約条項を付した契約)の保険料は長期係数を乗じて算出され、保険期間が長くなるほど割引が大きくなります。家計に無理の無い保険料を基本に長期契約を検討しましょう。なお。2021年1月に長期係数が見直され、3年~5年契約の割引率が低くなっています。
地震保険の保険料は、どの保険会社も同じ!?
地震保険は、どの会社で加入しても補償範囲、補償内容、保険料は同じです。生命保険や医療保険のように「各社を比較してより良い保障でより安い保険料のプランを選ぶ」などの必要はありません。地震保険は、法律に基づいて政府と損害保険会社各社が運営する国の制度のため同一に設計されています。大切なのは、地震保険にセットされる「火災保険選び」です。
地震保険の付帯率は、右肩上がり!
災害による保険金の支払件数も増加傾向
地震保険は火災保険とあわせて契約する仕組みですが、その付帯の割合を示したのが付帯率です。指標損害保険料率算出機構のデータによれば、2019年度の地震保険・付帯率は66.7%。2019年度に契約された火災保険の66.7%が地震保険を契約していることになります。全国平均の付帯率は上昇傾向です(下記グラフ参照)。
日本地震再保険株式会社と日本損害保険協会の調べによれば、2021年2月に発生した福島県沖を震源とする地震による各損害保険会社の保険金支払い件数(264,078件)が、2016年4月の熊本地震の支払件数(214,003件)を超えたとのこと(件数は2021年8月時)。
大規模災害における支払件数の差は、地震保険の付帯率と加入率が要因の一つだと考えられます。2015年度の熊本県の地震保険付帯率は63.8%、加入率は35.6%。一方、被害の大きかった宮城県の2020年度の付帯率は87.5%、加入率は51.9%と、全国計の付帯率68.3%、加入率33.9%を大きく上まわっています。
地震保険は生活再建の心強いサポートです。万が一の備えとして検討したい保険です。なお、熊本県の2020年度の加入率は35.6%と全国計を上まわりました。
■地震保険の付帯率推移(全国)
※3 「付帯率」とは、当該年度中に契約された火災保険契約(住宅物件)に地震保険契約が附帯されている割合。
※4 グラフの付帯率は、居住用建物および家財を対象として損害保険会社が取り扱っている「地震保険」のみの数値であり、各種共済については含みません。
備えあれば憂いなし。
我が家を総点検して地震に強い家にしよう
地震保険は、火災保険とセットで加入しなければなりません。マンション購入時に契約した火災保険に地震保険を付帯していない場合は、後で付加することも可能です。まずは、ご自身の火災保険の内容、地震保険の契約の有無を確認しましょう。マンションの場合、管理組合が共用部分の地震保険に加入しているか否か、そして契約内容もぜひ確認ください。未加入の場合は管理組合の理事会等で議題に取り上げてもらうと、検討が進みます。
地震保険の保険金額は、火災保険の契約金額の最大50%であり、地震保険の保険金だけで我が家を再建することは難しいのが現状です。住宅ローンを抱えたまま被災すると、新たな住宅取得や専有部分の改修工事のために、二重でローンを組むことになるかもしれません。地震保険の目的は生活再建です。地震保険の保険金は被災後の暮らしの一助となるに違いありません。
なお、地震保険の保険料は、所得税等の控除の対象です。詳細は、下記国税庁のサイトをご覧くださると幸いです。
地震保険での備えに加え、日頃からの備えも大切です。災害時に心配なのは家族の安否です。家族との連絡方法や集合場所、避難先を共有しておきましょう。近年発生した地震では、ケガをした人の約半数が家具類の転倒、落下、移動が原因でした。家具や電化製品をしっかり固定すること。ベッドやソファとの位置関係や、出口を塞がないような配置も重要です。
古いマンションの場合は耐震診断を受けることも大切です。マンションの管理組合の取り組みや地震保険への加入の有無なども確認し、防災訓練などには積極的に参加したいものです。「備えあれば憂いなし」。自分と家族の豊かな暮らしのために、我が家の“まさか”に備えましょう。
※掲載の情報は2022年4月現在
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ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
宅地建物取引士・産業カウンセラー・自分予算®プランナー
大石 泉氏
(株)リクルートにて週刊住宅情報(現SUUMO)の編集・制作等に約15年携わった後、2001年にFP事務所を設立。
「住まい、キャリア、マネー」の3つの柱で個人の豊かな暮らしをサポート。